THORNY PATH


Odai

ショコラ



チョコレイトキス

2009 St.Valentinday




「……ジェーソンさん」
「…解ってる」
 ぽつりと零れる幼い声。
 それに話しかけられたギデオンは重い……それは重い溜め息を吐く。
 目の前には、豪華な花束がどんっと置かれている。
「……何ていうか……あの一族って熱烈ですね」
 そう呟かれる声はしみじみと実感がこもっている。
 それに賛同しながら花束を手に取ると無造作にゴミ箱に捨てる。
 その目はひたすら冷たいが、すぐに和ませるとシンを見る。
「悪かったな。すぐお茶にしよう」
「ジェーソンさんはお疲れでしょう? 私が淹れますよ」
 幼い子供は愛らしい笑顔で告げると、慣れた様子で台所へ向かう。
 この子供の淹れたお茶は同じものを使っていても格段に美味しさが違うことをよく知っている。
 特に、特別に付いていった警察署で少し手を加えるだけで美味しいと感じるのにはギデオンを含めて心底驚いたのは今でも記憶に新しい。
 思い出しながらシンが台所に立つのを黙認すると、何か菓子があったかと戸棚や冷蔵庫を開ける。
 だが冷蔵庫を開けた途端、固まる。
「ギデオンさん?」
 珍しい光景に気づいたシンは首をかしげながら近寄ると、ギデオンは溜め息を吐いて冷蔵庫に手を伸ばして、引き戻す。
 そこには、立派なチョコレート・ケーキ。
 だがその芸術性のあるデコレーションと見事なバランスを見抜いたシンは、これが一般のお店で売られていないことを見抜く。
「ギデオンさんが用意…してないですね」
「ああ」
 なら、一つしかない。
「美味しそうではあるんですけど……怖いですね」
 何が入っているか解ったものじゃない。
「勿論捨てるさ」
 ギデオンはきっぱりはっきり断言するとケーキを脇に置く。
「いいお茶菓子が無いから何か買ってこよう」
「そ、そんなこと…」
「させてくれ」
 くしゃりと頭を撫でると零れる笑み。
 それに笑みを浮かべると、かけてある上着を羽織って玄関に向かう。
「折角だからチョコレートにしよう」
「では、私はとびっきりのコーヒーをジェーソンさんにプレゼントしますね」
 シンが満面の笑みを浮かべての言葉に、
「それは負けてられないな」
 ギデオンは楽しそうな声を漏らした。