THORNY PATH


Odai

ショコラ



最高級の贈り物

2009 St.Valentinday




「夢みたいです」
 にっこりと眼前で広がる美しい笑み。
 その表情に己の顔も自然と綻ぶ。
「夢では困る」
 ついて出た言葉に見開いたシンは謝罪を口にする。
「そうですね。でも、本当に嬉しいものですから」
「シン」
 敬語。
 短い言葉だがその意味をきちんと理解したシンは少し頬を赤く染める。
「…ごめんなさい。グ…義兄さん」
 最近口にし始めた言葉。
 だが未だに慣れないそれに、照れたように目を伏せる。
 ギブスは暖かい眼差しを向けながら笑みを零すと、手を伸ばして頭を撫でる。
「ありがとうございます」
 嬉しそうな笑みを浮かべると、その場で身を翻す。
「今日は折角…義兄さんと一緒ですし、バレンタインデーでもあるんでご馳走にしてみました」
 そういって取り出す料理はいつもより豪華で美しい。
「美味しそうだ」
「デザートもあるんです」
 目の前の彼にあわせて大人のデザートに挑戦した。
 その為にここ数日有名なお店に言って味見と調査を繰り返したのだ。
「楽しみにしてる」
「はい」
 目の前にいるこの人の顔が嬉しそうにしてくれればいい。
 その時を思い浮かべ期待と不安を胸に抱えながら手際よく整える。
「…シン」
「はい?」
「こんなに良くしてくれたのに……私は何も用意していない」
 申し訳ない。
 グリッソムの謝罪にシンは瞳を瞬かせ……穏やかに首を横に振る。
「もう貰っています」
「?」
 意外な言葉に不思議そうに首をかしげると、シンは手を伸ばして頬に触れる。
「貴方とこうしていられる。それだけで私にとっては最高の贈り物です」
 目を輝かせ真っ直ぐな言葉を投げつけてくる。
 それにグリッソムは驚きに目を見開き……滅多に見せない柔らかで嬉しそうな笑みを浮かべると、
「それは私も同じだよ。シン」
 愛しさを込めた声で告げた。