Odai皇帝の権威玉座が牢獄にあるとしても?The earl who grew old. (1990年)
静寂な廊下。 そこに響く数人分の靴音。 靴音は、やがて最奥の部屋の前で止まる。 ジャラリという金属音と共に鍵束が出され、その部屋の鍵が音を立てて開けられる。 「入れ」 それに真ん中の…失っている右腕以外の手足を拘束され顔の下半分を覆われた老人は連れられ中に入ると椅子に座らされる。 男はゆっくりと顔を上げ、 「口の枷を外して欲しいんだがね」 少しくぐもった声で尋ねる。 だが見張り役である男達数人は嫌そうな…だが怯えの入った顔で老人を見る。 老人は一見品の良い者に見えるが、実際はとんてもない危険人物なのだ。 その事実に怯む男達にクツクツと喉から漏れる笑い声。 「怖がらなくてもいい」 老人の目が哀れむような色を抱える。 「君達が食事をする時好き嫌いがあり選択する自由があるように、私にも好みというものがある」 それに…… 「生涯で最高のものを食べたからね、今はつまみ食いをする気はないよ」 にこやかに楽しげに笑う。 だがそれだけに、恐ろしい。 男達の額にじわりと浮かぶ汗。 老人はその反応にさらに楽しげに笑うと、 「暫くは息苦しいが我慢しよう」 仕方ないとばかりにそう言うと、ゆっくりと目を閉じる。 その様子に警戒しながらも男達は部屋から出ると、ドアに厳重な鍵をかけて立ち去っていく。 やがて、廊下に静寂が戻る。 老人はそれを大して気にした様子も無く、楽しそうに笑って唇を舐める。 思い出すは甘美な味。 人生最高のご馳走にかぶりついたあの瞬間は、きっと死ぬまで思い出される。 ――だが、二つ残してしまったなぁ。 食いつきたかったのだが、阻まれて三流で我慢してしまった。 だが…もう自分が表に出ることは無い。 こうやって拘束された今でもやれることはあるが、当主の座を孫に譲った今自分は大人しく世界を見るだけ。 それに…だ。 恐らく自分が残したものは孫も気に入っているから、手に入れようとするだろう。 あの真っ直ぐな憎しみが篭った目で見つめ、最後まで足掻くだろうその姿。 それは何て甘美な光景だろう。 ――やはり少し残念だな。 やはり手を伸ばすべきだったと思いながら、老人は喉を震わした。 どこにいても気質は変わらず |