THORNY PATH


Odai

塔の切望



壊したい? それとも壊されたい?

A man like the devil. (2005〜)




 目的地へ向かう途中で立ち寄った町。
 兄と別れて視線をさり気なく向けた先に…にこやかな笑み。
 それに気づいていない振りをして、さり気なく視線をそらす。
(見てない。見えてない。そもそもこんな田舎にいるなんて…絶対に人違いだ)
 サムはそのままここから去ろうと歩のスピードを速め…

「酷いなぁ」

 だが後ろから引っ張られ、その歩は止まる。
 慌てて振り向くと、金髪に薄い赤の目をした美貌の男性。
「……シューレン」
「久しぶり、サミュエル」
 にこりと浮かぶ笑み。
 それを見たものは間違いなく見惚れてしまう代物だが、実態を知っているサムにっとては恐ろしいものでしかない。
「私のことはエディって呼んでよ」
 サミュエルだったら問題ないよ。
「問題ないって…」
「私、見ず知らずの人間にファーストネーム呼ばれるの嫌いなんだ。だけどサミュエルは好きだからね」
 にこにこと笑う顔と共に告げられる言葉。
 だが言われた相手が彼である場合、全く正反対な感情になってしまう。
「……オレ、これから用事があるんだけど…」
「君のお兄さんならナンパでもしてるだろうから合流は当分先じゃない」
 サム自身もそう思っているので何とも言い返せない。
 だが…自分の周囲に関してとことん調べられているらしい。
 そんなことを思っていると唇の横に湿った感触。
 驚いて視線を向けると、近づいてくる綺麗な顔。
 咄嗟に押しのけ離れようとすると逆に引っ張られ、路地裏へ移動されてしまう。
「おま――」
「仕事は無いんだから暇でしょ? だったら…味見させてよ」
 ぺろりと唇を舐めるその表情は肉食獣を思わせるもの。
「お断りだ!!」
 何度もやられたら溜まらない。
「誰が血なんかやるか!」
「――血が嫌なら…他のにしようかな」
 にぃぃいっと笑みを深くすると素早い動きで取り押さえ唇を重ね口内に舌を這わす。
 サムは大きく目を開き――咄嗟に舌を噛む。
「……か、えれ!!」
 顔を真っ赤にしながら叫ぶと、零れる笑み。
「――本当、サミュエルって可愛いね」
(野バラが刻印をあげてないのに気にかけるのが良く解る)
 悲しみや生まれ育ちから人との距離を置くが、それを壊し素顔を晒すのが愉しい。
「サミュエルが欲しいな」
 本気で手を出せば、今ここで浚うのも容易い。
 だが……こうやってからかうのも愉しいのだ。
「ねえ、サミュエル」
 非常に愉しそうに見ながら顔を近づけると、サムの背筋に悪寒が走る。
「――もっとちょうだい」
「…どういう意味で…」
「ふふ」
 発せられる艶やかな声音。
 それで悟ったサムはまた違った意味で顔を青ざめ小さな悲鳴を漏らす。
 だが、その声は途中で飲み込まれていった。







どちらにしても全て手に入れる