THORNY PATH


Odai

逆しまな死



終わりか始まりか

My turning point. (1981年)




 母が死んだ。
 どんなに辛いことが悲しいことが起こっても、自分を慈しんでくれた人が。
 まるで眠っているかのような穏やかな顔。
 だけどその肌は色を失っている。
「…母さん」
 あっという間に色を失う世界。
 母が唯一だった。
 この世界を意味あるものにしてくれる人だった。
 母がいたからこそ、私はここに留まれた。


 でも、もういない。


 巻き込まれた交通事故。
 過失は向こう側。
 母は悪くないと告げてくる周りの声。
 でも、そんなのもう意味は無い。
 どっちにしろ帰ってこないのだから。






 小さく開かれた葬儀。
 みんなが優しくかけてくれるが、その裏では様々な思惑が駆け巡っていることぐらいすぐに察せられる。
 これから自分がどうなるか、どうするか。
 考えれば、大きな確立で絶縁された祖父母の下へ行くことになるだろう。
 そして……今まで以上に安らいだ時間など無くなる。
 独り立ち出来るその時まで待てばいいのか。
 それとも……すぐに出るために『人』を止め、修羅の道へ進むか。


(――)


「……だよね。母さん」
 母は自分を貫いた。
 どんなに苦しくても辛くても…私を産むため一人で立つことを選んだ。
 そんな母のように私もなりたい。
「連れてってくれまへんか」
「解っとるんか、小僧」
「解っとらん愚か者とでも思っとってくださったんですか」
「相も変わらず小癪な子じゃな」
 『鬼』目がこちらを向く。
「私に才があると言うてくれたんは嘘や無い。それくらいは解っとります」
 真っ直ぐにその鋭い目を見つめる。
「連れてってください」
 きっぱり再び口にするとゆっくりと彼は立ち上がる。

 風圧。

 ぴたりと刃が首筋に当たる。
 だがそれでも見つめ続けていたら、
「――好きにしろ」
 背を向ける『鬼』の言葉に笑うと、追いかけるために足を踏み出した。







一度終わり、

始めるために修羅の道へ