THORNY PATH


Odai

魔術師の謀



その手に掌握したものは?

The first hatred. (1980年代)




 初めて一から私が生み出した作品が完成した。
 それはとても醜悪だったもの。
 髪に指を通すと、さらりと流れ行く。
『綺麗だよ』
 褒めていた髪。
 その髪に触れ、笑い――

 ぶちぃ

「いらない」
 ああ何て醜いのだろう。
 髪だけじゃない…肌も目も口も――それを形容する全てが醜い。
「でもこれで美しくなった」
 つっと零れ落ちる紅にそっと舌を這わす。
 最初は不味いと思ったが、手塩をかけて創り上げたからか今では熟成されたワインのように旨みがある。
「ふふふ」
 笑みが止まらない。
 これで明日になったらきっと…
「きっと喜んでくれるよ」
 よかったねと囁くと、明日を待つために踵を返した。



「素敵だろう?」
 笑いかけると、ゆるりと上がる漆黒の目。
 ――ああ。
 その目に浮かぶ色にぞくりと体に震えが走るのが解る。
 こんなにも容易く自分を高揚させてくれるのは、目の前に居る人しかいない。
「…あ…なたはぁあああああああああああああああ!!!」
 殺気が真っ直ぐに叩きつけながら振り下ろしてくる白銀。
 それは鋭い攻撃だけど…怒りに身を任せているせいで単調だ。
 一歩ずれて避けると、そのまま体を押し倒して口付けを交わす。
「っ!!」
 だが差し込んだ舌を噛み付かれ、すぐに顔を上げてしまう。
「酷いな」
「…どっちが!!」
「君がだよ」
 キスをする間際まで顔を近づける。
「私の気持ちは知っているのに…」
「…貴方の気持ちに答える気はないとはっきり言ったはずだ!」
「うん。別にそれでもいいんだ。でも、ね」
 許せないんだ。
「君が私以外のものに愛を囁くなんて…ね」
 そして私よりもさらに熱く見つめ、意識を囚われるなんて。
「…会った始めから嫌いだと思ったが…今では貴方が憎い」
「そう」
「…殺してやる」
 真っ直ぐに見つめてくる憎悪の瞳。
 そして歓喜に震える私の心。
 これでもう、この愛しき人は私を忘れられない。
 何をしてもどこにいても……私が何をするのか気にかけずにはいられなくなるだろう。
 そして姿を現せば…何を優先しても私を見て追ってくる。
 まるで…愛する人を一途に求めてくるように。


「愛してるよ、私の野バラ」
「お前は私が殺す」







一途な憎悪