MainLa Traviata
出発前の一幕。迎えに行く前の一幕。 (2004 or 2005?) 嬉しさ半分、不可解半分。 今のダニー・メッサーの気持ちを表すとそう言うが相応しいだろう。 嬉しさと言うのは勿論、滅多に経験することが無い学会へ行けるということ。 そして不可解さはシンの計略によっているという今の状況だった。 目立つのが苦手で義兄の前で恥をかくかもしれないと不安げに笑う姿にあっさりと絆されたマックによって自分の同行が決まったのだ。 「……学会くらい自分で参加するって」 ダニーの愚痴にシンは困ったように笑う。 「解ってるよ。でも…一人じゃ怖いのは本当なんだ」 「本当、ドクターが好きなんだな」 「…うん。恩人なんだ」 仄かに赤くなる頬は義兄を思うと言うよりも憧れや恋人を思っているかのようだ。 だが出会ってからそのような反応なんで慣れているダニーは頭を撫でる。 「久しぶりに会えるんだろ?」 「うん。空港まで迎えてくれるって」 シンの白い手が伸びてダニーの手に触れる。 「そして…初めて義兄に友人を紹介するつもりなんだ」 恥ずかしそうな顔にダニーは目を見開き……釣られるように顔を赤くする。 「…そ…うか」 「うん」 互いに真っ赤になる二人。 それぞれ顔がいいだけに人々の目に留まりやすいだけに、好奇心の視線が集まっている。 ――もしかして私は邪魔者ではないだろうか。 少し席を外していたマックは、戻ってきたら目に飛び込んできた光景に、この中に戻るべきか否か数秒考えてしまった。 一方、カジノが盛んな観光地として有名な地にて。 ラスベガス市警CSI夜番主任ギル・グリッソムは書類を片手に満足げな笑みを浮かべる。 「あら」 その表情を偶然見たキャサリンは珍しいことに驚きながらオフィスのドアを開ける。 「キャサリン」 「…珍しいわね」 貴方がそこまで机に向かっているなんて。 デスクワークよりも研究や捜査を好むグリッソムは常に期限ギリギリの書類が大量に存在する。 だが今日の彼の机には明らかに先程よりも少なくなった乱雑に詰まれた紙の束が置かれている。 「今日は余計なことに縛られるわけにはいかないからな」 デスクワークも仕事の一部なので余計とは言えないのだが彼女はあえてそこは何も言わずに首を傾げる。 「何かあったかしら」 「大事な人が来るんだ」 それでここ最近周りで騒がれていることを思い出した彼女はグリッソムの言葉の意味を知る。 「学会の参加者?」 「ああ。NYから今日の午後に到着すると連絡があった」 グリッソムは嬉しそうに笑いながら立ち上がると自分の姿を見下ろし、確認した後に傍にかけてあるスーツを手に取る。 「少し出かけてくる」 「ええ。今は取り立て事件も無いから問題ないわ」 グリッソムの機嫌の良さそうな表情を損ねるつもりはないキャサリンは素直に送り出す言葉を投げると、共にオフィスを出る。 「あれ、主任」 どっか出かけるんですか? 休憩室の前を通りかかった時にグリッソムのスーツ姿に気づいた部下達――ニックとウォリック、サラ。 そして自身の希望によって見習いの捜査官であるグレッグが好奇心に満ちた視線を向ける。 「ああ。空港にな」 「空港にですか?」 何で? 「学会に参加する人を迎えに行くんですって」 グリッソムより説明上手なキャサリンが手短に先ほど話したことを告げる。 「誰なの?」 サラの好奇に満ちた目にグリッソムはいつもより機嫌のよい声で、 「一人はマック・テイラーだ」 「あ、知ってます!」 有名な犯罪学者であり何回もその論文を読んだことがある。 ニックの声に賛同する面々。 「彼が部下を連れてくるそうだから、君達も有益な話を聞けるだろう」 グリッソムはそう告げると腕時計で時間を確認した後に顔を上げると、 「もう一人は…心理方面に関して幅広く論文を書いているものだ」 随分とぼかした物言いにそれぞれ不可解な顔を浮かべる。 「有名な人なんですか?」 「…私見が大分混じってるから言えない」 それもまた珍しい発言だ。 「誰なんです?」 グレッグが問いかけると彼は普段はあまり浮かべない嬉しそうな笑みを浮かべ、 「シン・グリッソム。私の義弟だ」 そう告げると時間だと呟いて休憩室の前から去って行く。 その姿を見送った数秒後、 「主任って弟いたの?」 すっとんきょうなグレッグの声が響いた。 |