THORNY PATH


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アマデウスは嘲笑う

マイアミ S3の一話目のため、死ネタでネタバレ注意。
(2004)




 ティム・スピードルが死んだ。
「…嘘だ」
 その情報に、否定しか出なかった。




 何が会っても言いようにとマイアミの情報は詳しく手に入れていた自分にその知らせはすぐに届いた。
 殉職。
 しかも銃の整備不良によって発砲しなかったという。
「だから…あれほど…」
 昔から無頓着で、銃を見るたびにその有様にいつも苦言を言っていた。
 彼らしいと思うだけじゃダメだったのか。
 徹底的に言えばよかったのか。
「……失格だな」
 NYにいるとは言え護ると決めたのに、何も出来なかった。
 顔を上げると十字架。
 彼の死を聞いて、またマイアミでスピードルの死となった事件が解決したと聞いてやってきたのは近くの教会だった。
 今頃…マイアミでは青空の下に銃声が響いているだろう。
 シンは手にある刀を抱き締め、目を瞑る。
 脳裏に浮かぶのは黒い髪に黒い目。
 笑うなんて滅多にしない無愛想さだけどその態度や目の色はとても素直で子供のように純粋で…こんな自分によく怒ってくれた。
 同僚で……友人という位置にいたのに。
 一体幾度失敗すればいいのだろうか。
 母を事故で失い、師も失い…これ以上失いたくないと思ったのに……意図も簡単に大切なものを奪っていく。
「君はそれでも泣かないんだね」
 そこにかかる声にゆるりと視線を上げると、金髪。
「……何しに来たんです」
「…彼の追憶に。私だって気に入っていたからね」
 薄桜色の目が悲しげに細める。
 シンはそれに目を細めるが……それ以上何も言わずにそっと己の得物に頬を寄せる。
「…ということは貴方の仕業ではありませんね」
「最初から解っていたでしょ。あんな銃撃戦で乱暴なやり方は趣味じゃない」
 男の心外だという台詞にシンは「そうですね」と呟く。
 あまり認めたくないが彼は自分には『嘘』は付かない。
 それに彼の言うとおり乱暴なやり方はこのまないし、気に入った彼を現場に放置などしないだろう。
「……ここまで読めてしまうから盗聴器を部屋に仕込まれるんですね」
「全部それを見破って外して、FBIとCIAを脅して監視を緩ませたじゃない」
 男は楽しそうに笑うがすぐに笑みを引っ込ませると、シンの顔を覗き込む。
「葬式に出ないんだね」
「…主義をご存知でしょう」
「……お互い、悪魔と死神に愛されているからね」
 男は苦笑を浮かべるとシンから離れる。
「今日は私も君も大人しく喪にふくそう。それじゃあ、またね」
「……次に会った時は容赦しません」
「――楽しみだよ」
 男は笑うと静かにその場から去っていき、シンはただ正面を向き無言でそれを見送った。




「――シン」
 声をかけられ目を開けて振り向くと、ここで出来た友人の姿。
「…ダニー」
 名を呼ぶとダニーは歩み寄り、そっと頬に触れてくる。
「…大丈夫…じゃないよな」
「ごめん。心配かけたね」
 疲れたように笑うシンの顔にダニーはそっと抱き締める。
 シンは目を伏せる。
「声は…聞いたことあったよな」
「ああ。プライベートと仕事で」
 シンがマイアミで働いていた時に仲がよかった同僚で友人だと。
 プライベートではスピードルとダニーの愚痴の言い合いでシンの目を白黒させ、それで互いに事情を話した。
 仕事ではマイアミと合同捜査をすることになって指紋をあわせる時に相手が彼だと解り二言三言きちんと話すこともあった。
 いつになるか解らないけど機会があれば会ってみたいと思っていたのだが……それはもう叶わない。
「…ありがとう、ダニー」
 礼を言われて離すと、するりと立ち上がるシン。
 そして教会の祭壇前まで来ると、十字架を見上げる。
「…ティム……何も出来なかった私は…これくらいしか出来ないけど…貴方に歌を」
 そしてシンは口を開き――旋律を紡ぐ。
 優しく悲しい鎮魂歌を……






 ティム。
 どうか…天国で安らかに。



(Title:SBY)