Main傍観者の主張
ダニー加入前のシンとバラ。 (1999 or 2000) ガチャリ。 「……」 パタン。 「……はー」 住居にしているドアを開けて再び閉めたシンはゆっくりと息を吐く。 と、ゆっくりと深呼吸すると再び手を伸ばしてドアを開ける。 その勢いに負けたようにそれがゆっくりと動くだけで、その光景が消える訳でも幻である訳でもない。 …出来れば幻であって欲しかったんだけど… 「なぁにそんな所で突っ立ってんだよ」 足音と馴染んだ気配。 仕事を無事終えて夕飯をご馳走にきたダニーが立っているシンを見て声をかける。 するとシンは振り返り…妙に空ろな目に驚く。 「ど、どうしたんだ?」 「どーしたもこーしたも…」 指を差してくるのでダニーが覗き込んで……息を呑む。 それはダニーがシンと友人付き合いしてから自室よりも通い始めたシンの家…のはずである。 だが、今日は床一面にまるで絨毯のように黒いバラが敷かれている。 「……えーっと……お前の趣味か?」 「まさか」 シンは忌々しそうに否定すると、首を横に振る。 「ダニー。少しご飯待ってて。こっちを片付けるから」 「別にいいけど…」 ダニーが頷くと、シンは無造作にバラを踏みしめていく。 (何か怒ってる…?) 感情を爆発も剥きだしにもしないが、絶対零度の冷気が漂っている。 シンの怒りが解けるまで大人しくしていようと、ダニーは荷物をソファーに置く。 ふとテーブルを見ると、同じ黒いバラの花束にカードがある。 ちらりとシンの様子に一瞥した後、そっと手を伸ばしてそのカードを手にする。 『To my beloved W.Rose. I hope that you take my hand sometime.』 え…っと… 「ラブレター?」 「違うよ」 思いもがけない背後からの返事に、ダニーは驚いて振り向く。 そこには変わらずの美貌だが、目には不愉快そうな色。 「でもこれって…そう読めないか?」 下の薔薇も典型的だが口説くときに使うものだ。 ダニーの言葉にシンは一つ溜め息を零す。 「ただ単純にそうであればいいんだけどね」 「違うのか?」 「…ディナー前には聞かないほうがいいよ」 ディナーが食べれなくなる。 何とも不穏な言葉と共にぽんと肩に置かれる手。 そしてシンは箒で集めた黒紅の薔薇をゴミ袋に入れてしまう。 「そのカードも捨てといて。そしてディナーにしよう」 「…最後に二つ」 「何?」 シンが少し首を傾げてダニーを見る。 「この名前と、薔薇の品種は?」 「…名前はその送り主が勝手につけた私の愛称だよ。薔薇は日本で生まれた品種で黒真珠。品種名はそのまま使われているけど直訳するとブラック・パール…だね」 どこか困ったように彼は笑うと、背を向けて台所へ行ってしまう。 それを見送ったダニーは、カードを見つめてから、そっとゴミ袋の中にいれた。 (Title:SBY) |