Main反抗的な向日葵
「爪あと野ばら」後。電話越しで。 (2005) 受話器越しに流れる長い沈黙。 『……ごめんなさい』 だが静かに放たれる溜め息と共に謝罪。 『接触はともかく……まさか、気に入られてしまうなんて』 誤算だとシンの嘆いた声。 「…シン。別に気にしないで」 『…あの男は気に入ったものは必ず手に入れようとするはずです。サム、身辺には気をつけてください』 特にあの男は人外ともいえる能力を持っている。 『お兄さんには言いましたか?』 「別行動だったし…言っても信じるとは思えなかったから…」 今朝帰って来た兄にはただのかすり傷だと言って誤魔化した。 『……信じると思いますよ。貴方のお兄さんのことですから彼についての情報は持っているでしょう』 「でも……心配かけたくないんだ」 『知ってますよ』 この兄弟は互いの過去から心配をかけないと秘密を抱える。 ――そう言うところがちょっと自分と似てるのだ。 『なら、あの男に関しては私に連絡を。……事情を知ってる私なら少しくらい頼ってくださっても心は痛まないでしょう』 「…痛むよ」 『ではお互い助け合うために情報を取りあうというのはどうでしょう』 サムは優しいとシンが告げてくるのを聞いて、優しいのはシンの方だと思いながら、 「ボクよりシンが心配なんだよ。だって…あの男に愛されてる」 『私は長い付き合いなんて多少の方法は知っていますよ。それに、向こうには惚れた弱味というのもあります』 そうは思えないんだけど… 『それよりサムの方が危険ですよ』 自分が対処し、連れ去られなければ刻印を贈ったものにも危険にはならない。 だが……サムは刻印が無いのに気に入られたのだ。 一番狙われやすいのはサムだ。 『気をつけてください。今度出会ったら殺してください』 「…容易く死ぬような人だとは思えないんだけど…」 『知ってますけど、本気で抵抗してください』 一度連れ去られたら自分でも取り戻すのは難しくなる。 シンの真剣な声音にサムは戸惑うが、それだけに危険な男だと認識させられて必死に頷く。 「解った」 自分の身が危ないのだ。 あの男は人間であるから極力殺さないように…なんて偽善は捨てるべきだ。 「シンも気をつけて」 『ありがとうございます。サム』 柔らかいお礼が耳に響く。 それを受けながらサムも笑うと、ゆっくりと携帯電話の電源を切った。 「サム?」 何かあったのか? 兄の言葉にサムは気づかれないように一呼吸置いてから振り向いて首を横に振る。 「何も…ただ昔お世話になった人から連絡があったんだ」 「それで…」 「ボクを心配してくれただけだよ」 兄は嘘を見抜くのが上手いけど、これは嘘じゃない。 それに兄に迷惑をかけたくない。 そんな思いを湧かせながら、サムは笑った。 (Title:SBY) |