Main爪あと野ばら
スパナチュS1でのサムと… (2005) それは、ある街に寄った夜だった。 自分達が関わる事件も特に無かったこともあり、一泊だけで次の場所へ行くこうと決め、兄はいつものように女性の下へ。 それに咎めながらも一人で先にモーテルへ帰る道。 「こんばんは」 声をかけられた。 該当に照らされた金髪に薄いピンク色の目。 何もかも整ったその姿は、異性を骨抜きにし同性さえも見惚れるだろう。 ――ディーン以外で始めてみたな。 もう一人絶世の美人も見たことはあるが……彼は兄とは別の美なのであえて除外しながらそんなことを思いながら、 「こんばんは」 挨拶を返す。 すると彼の顔に笑みが広がる。 「律儀な方だ」 「挨拶されたら返すのは当然だと思うんだけど…」 サムが首を傾げながら当然のように言うと青年は目を見開いた後、 「――そうだね」 楽しそうに声を零す。 「見かけない顔だけど…この街にはどうして来たの?」 青年の問いかけにわざわざ答えないのも可笑しいかと思い兄と来るまで旅行している途中で寄ったのだと告げる。 「飛行機じゃなくて?」 「飛行場から遠い所も見に行っているから…それに、兄が嫌いなんだ」 茶化すように言うと青年は楽しげに笑みを零すと歩く。 「君は平気なの?」 「ああ、何回も乗ったことあるよ。君も?」 「やっぱり便利だからね」 どうしてもそっちを取ると青年は笑うとサムの前にやってくる。 そしてサムの頬に触れようと手を伸ばす。 パシン 「あ、ごめん」 サムがその手を弾いてしまい咄嗟に謝る。 すると青年は目を数回瞬かせ―― 「ふふ」 笑う。 途端、ぞわりと背筋に感じる寒気。 頭に点滅する危険信号にサムはさり気なく一歩下がり… ガシッ 「だぁめ」 だが、腕をつかまれ阻まれてしまう。 「流石、お父さんに鍛えられてハンターをしているだけはあるね」 「っ!?」 こいつは、全て知っていて接触してきたんだ。 逃げようと、掴まれた腕を放させようとする。 だが、青年は離れないままさらに強引に細い路地へと入る。 「馬鹿力!」 「人間でも鍛えれば人外になれる。私や…愛しい野バラのようにね」 「野バラ?」 何で野バラが人外になるのかと疑問を起こしていると青年は「ああ」と笑う。 「君にはシン・グリッソムと言ったほうがいいよね」 心当たりのある名前に目を見開く。 確かにバラは似合うなと思ってしまうが… 「……それで、彼の知り合いがボクに何のよう?」 「見てみたかっただけだよ」 青年は薄い色の目を少し虚空へと飛ばす。 「シンが君の事を何かと気にかけているみたいだから、ね」 整った顔は何故か楽しそうにサムの腕を強引に口元に持っていき――噛み付く。 「いっ!?」 ブツリと皮膚が切り裂く感触。 ――本当に人間か!? 人の歯とは思えない鋭利さと痛みに予想外の思いから咄嗟に拳を振り下ろす。 だが、人とは思えない力に封じられ抵抗らしき抵抗は出来ない。 だが青年は何故か驚きに満ちた目でサムの顔を見る。 「――これは驚いたな」 「何…」 「そこら辺にいる人間とも愛しい野バラとも違う」 青年から感嘆の溜め息が漏れる。 「こんな濃厚のもの、初めてだ」 美味しいという言葉を顔に表した青年の笑みにサムの背筋に再び走る寒気。 「…カニバリズム!?」 「世間ではそうらしいね」 べろりとサムから流れる血を舐めると、 「そう言えば名乗ってなかったね。私はエディ・L・シューレン12世」 「人食い……シューレン!?」 有名な血筋に事件は本当は悪魔や呪いの仕業ではないかと疑ったことがあったらしいが本当に人間の仕業だったといつか兄が零していた。 「そう呼ぶ人もいるけど――君のお兄さんはこんな味してなかったのに…」 「ディーンのを…」 大事な家族のことを持ち出されサムの目が鋭くなる。 「兄思いだね。――ただの味見だよ。彼が一人の時に偶然あって味見したんだけど…彼は至って普通だったよ」 シンが何かと彼ら兄弟の動きを気にかけているのを知っていて調べた。 その結果、過去に接触があった弟の方に興味を持って邪魔になるなら何か手をうとうと思っていただけなのに。 なのに今まで味わったことの無い濃厚な血肉を持っている。 「嬉しい誤算だ」 シューレンは楽しげに笑うとサムの首筋を舐める。 「ここで食べるのは勿体無いね」 こんな美味しいのはじっくりと少しずつ食べていくのがいい。 「決めた」 「な、にを…」 楽しそうなシューレンの仕草にサムは警戒しながら問うと、 「君も『連れて』いこう」 「訳が…解らない」 「そうだろうね。まあそれは、愛しき野バラに聞いてよ」 シューレンは楽しげに愛しげにそう助言すると、首を伸ばして。 ぺろり 「っっっっっっっ!?」 唇に感じた生暖かい感触にサムの顔が青くなる。 「あ、いい顔」 楽しげにシューレンは笑うと、サムから離れる。 「じゃあまたね、サミュエル」 シューレンはにこやかに挨拶すると闇の中へと溶け込むように消えていった。 ずるずると壁伝いに降りてくる体。 「……今日は厄日だ」 がくりと肩を落としながら思わず呟いてしまう。 まさかカニバリズムの代表であるシューレン12世に出会って噛まれて血を舐められたあげく、舌まで舐められたなんて…絶対にベスト5に入るほど嫌な記憶だ。 「………帰って寝よう」 そして明日、シンに尋ねてみよう。 名刺に携帯電話の番号があるし彼に会ったと聞けば答えてくれるだろう。 今日はもう何も考えたくないとサムは腕を押さえながらゆっくりと立ち上がった。 (Title:SBY) |