THORNY PATH


Main

光と闇のチェインギャング

スパナチュS1でのサムとシン
(2005)




 ゆるりと目を開くとベッドに寝ている青年。
 ――サム?
 数年前に出会った若者。
 ハンターを生業としている家から離れて「普通」の生活を歩んでいると事件で偶然出会ったときにそう教えてくれた。
 だがなぜそれなのに彼を自分は見ているのか……
(またやったよ)
 シンは溜め息を吐くと額を手で押さえる。
 自分には霊感、または霊力がある。
 気配や直感、危険の区別などは師に鍛えられたのもあるが、元来それが強いことも加わってさらにそういう感覚には敏感らしい。
 だがその霊力は時々夢を渡り他人の夢を見る。
 夢は深層心理学を表すということで学問になってくらいのもの。
 だから人のプライバシーを覗くようで嫌いなのだ。
 が、
(これは…悪夢か)
 シンが前に手を突き出すとするりと入る感覚。
 そのままベッドの傍に着地するとそっと手を差し伸べ、額に触れる。
 ピクリと彼の体が震え、ゆっくりと目を開く。
「?」
「――サム」
 サムの空ろな視線がシンを捕らえる。
「……ミスター…シ…ン…?」
「呼び捨てでいいですよ」
 さらりと癖のある髪を撫ぜると、笑いかける。
「元気そうだね。今は大学を卒業したのかな」
「……ロースクールへ。でも休学中で…今は兄さんと一緒に…仕事を…」
「何か危険なことでも?」
「父…さんが…」
 あ、れ?
 サムは自分の意識がはっきりしていく中、疑問に気づいて身を起こして周りを見る。
「…ボクの部屋だ」
 ジェシカが殺されてその悪魔に復讐するためにその部屋を出たし、火災で燃えたはずだ。
 なのに何で……自分はここに?
「現実じゃありません。ここは貴方の夢です」
「ゆ…め?」
 サムが目を開いて呟くのでシンは頷くとベッドの端に腰をかける。
 これが夢ならこの部屋にいるのは頷ける。
 毎晩毎晩見る悪夢。
 恋人が悪魔の仕業によって天井に貼り付けされ燃え盛ったあの瞬間を今でも見る。
「でもそれに何で…貴方が…」
「あまりしたくないんですけど、時々私は誰かの夢へ渡るんです」
 そして覗くこともあれば、悪夢を出来るだけ軽減するために話しかけたりもする。
「まさか、サムに会うとは思いませんでした」
 にこりと浮かぶ笑みにサムは照れ笑いを浮かべてしまう。
「ボクの夢に入ったのは……悪夢だと思ったから?」
「ええ」
 目を伏せて頷くと、シンは身を乗り出してサムの顔を覗き込む。
「……わざわざ叶う夢を捨ててまで選んだ道です。きっと…相当の覚悟があるのでしょう。ですが…」
 彼は囁くように言いながらサムの頬に触れ、
「……私が言う資格はありませんがどうか生きてください。サム」





 ばちっと勢いよく開く目。
 視線を泳がせると馴染みない部屋模様。
 数秒の後、ここが数日前から泊まっているモーテルなのだということに気づく。
 サムはゆっくりと体を起こすと、隣の気配に視線をやる。
 ぐっすりと眠り続けている兄の姿を確認し、時刻を確かめると自分にしては長い睡眠時間。
 ……そしてサムにとって大きな点は悪夢を見なかったところ。
 漆黒の目に髪をした絶世の美が脳裏に浮かぶ。
 ……また助けられた。
 あの夢の中で…どこに真実があるのかは解らない。
 でも……嬉しかった。
「いつかお礼しないとな」
 何も知らなかったら訝られるだろうけど……それでも自分は助けてもらったから……
 最後にかけられた言葉には答えられそうにはないけれど、それでも温かくなった心にサムは目を細めて唇を吊り上げると、朝食を買いに行こうとベッドから抜け出した。



(Title:SBY)