THORNY PATH


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春を葬う花の雨

連載9話目で最終話。闇夜の道。
(2004)




 すっかり暗くなってしまった空。
「ん〜〜」
 シンは大きな伸びをする。
 その後姿を見てダニーは呆れた顔を見せる。
「……あんなことがあったのに呑気だな」
「こういうときだからこそ切り替えが必要なんだ」
 シンが笑いながら、軽快な足取りでダニーに歩み寄ると覗き込む。
「大丈夫。ダニーは私が護るから」
「…自分を護れよ」
 狙われているのはシンなのに相変わらず自分ばかり気遣ってくる彼の様子に呆れを込めて軽く小突く。
 結局、教会での事件は迷宮入りの色が濃くなりそうだった。
 証拠が全くでないので犯人を特定仕様が無い。
 また市警前の殺害はたくさんの証人がいるということで犯人は解っており捜索はしているが、今はまだ見つかっていなかった。
「もう、NYにはいないだろうね」
 事情を聞いて解放されたシンはダニーと共に家路につきながらぽつりと零す。
「よく解るな」
「……知りたくないけど読めるんだよね」
 だからFBIとCIAから監視対象になってしまうのだ。
 シンは嫌そうに溜め息をこぼすと、あの人形と見紛うべき顔をした男とその祖父を思い出す。
 師から続くこの縁は、自分が死ぬまで密接に関わっていき周りまで巻き込んでしまう黒い嵐を呼ぶ。
 …あの時のように師や……
「シ、ン?」
 戸惑う声に慌てて顔をあげると、焦ったような顔。
 だがそこに混じる僅かな恐怖に自分が少し我を忘れたのだと悟る。
「…ごめん」
 目を伏せて謝罪を口にする。
「なあ、シン」
「何?」
「…あいつと…本当はもっと…何かあったんじゃないか?」
 シンの目を真っ直ぐにダニーが見つめてくる。
 それに…シンは笑うと、
「まあ、良くない付き合いが長いからね」
 色々あったよと零す。
 だが何か腑に落ちない感じにダニーは眉間に皺を寄せる。
 その顔を見てシンは「ごめん」と零す。
「…心配してくれてありがとう。でも、大丈夫」
 笑ったままシンは安心させるための言葉を吐くと、帰ろうと告げて踵を返す。
 何が、大丈夫だ。
 揺らがぬ覚悟と決意、そして全てを諦めたかのような目をして何を大丈夫だと言うのだろう。
『君が真実を知ったとき凄く楽しみだ』
 シューレン12世の言葉が今更になって頭に響く。
 あの危ない男がそう言うほどの真実とは……そしてあの口調はまるで自分の何かが変わることを示すかのようだった。
 シンが自分に肝心なことを言わない癖はそこから来ているのだろうか…?
「……ダニー?」
「何でもない」
 呼ばれて顔を上げると不思議そうな顔。
 それにダニーは首を横に振って答えると、早足でシンの元へ向かった。







 その二人の後ろで、ひらりと闇に溶け込むような花弁が落ちた。



(Title:SBY)