Main春を葬う花の雨
連載五話目。去った後の敵意。 (2004) 花びらのシャワーが収まった後、男の姿は消えていた。 「ダニー、怪我は?」 みんなが呆然としている中、シンが振り向いてダニーを気遣う。 「…大丈夫だ」 「そっか。…良かった」 シンは安堵の溜め息を吐いて顔を上げたかと思うと、大きく一歩踏み込んでダニーに抱きつく。 突然のスキンシップに驚くダニー。 「おい、シ…」 「シン・グリッソム」 だが彼が何か言う前に横合いからかかる声。 それに振り向くと、後からやってきた黒スーツの男たち。 「…何のようです?」 「どういうことだ」 「どういう、とは?」 ダニーに抱きついたままシンが首を傾げる。 「どうして話さなかった」 「きちんとNYを警戒し続けたほうがいいと話しましたよ。そっちが勝手に否定して愚かな推測で別の方面を探っていたんではありませんか」 違いますか? シンの笑顔での毒舌に代表らしき男が図星を指されて顔を顰める。 「それに昨夜だって今日だってきちんと時間稼ぎをした功労者に対して詰問とは…だからFBIは嫌われてしまうんですよ」 シンのよく通る声に男たちが何者か知った周りの警官達は胡乱な視線を向ける。 だがそれでは応えることはない男が鼻を鳴らす。 「…ふん。あの男と同類が効いた口を言う」 「その同類の協力を得られないと捕まえられない貴方方は何なのです?」 私は口だけの男は嫌いです。 綺麗と言われる笑顔での強烈な言葉にFBIの顔色が怒りで赤くなる。 「お前っ」 「無能と言われたくなかったら早く追ったらいかがです? …まあ、もう手配済みでしょうけど」 こんな所で無駄口を叩いても仕方ないとばかりにシンはわざとらしく溜め息を吐くとダニーをさらに抱き締めながら…美しいが目はきっちり笑っていない笑みが広がる。 「…あんまり口だけだと…色々と考えなければいけませんね」 穏やかな声音での脅しを滲ませた声。 それは外見の、または普段見せる様子のシンしか知らない人間であるのなら、おどけるか、笑い飛ばせる台詞。 だが、FBIである男たちは知っていた。 シンという男は裏の世界では有名なクリムゾン・ファングを受け継ぐものであり……その経歴は生まれながらに複雑かつ壮絶な人生を送ってきていることを。 そしてその実力は一流の暗殺者でも真っ青で、殺そうと思えば一瞬で行えることを。 「っ」 FBIの警戒する反応を見てシンは笑みを浮かべ続けると、ダニーの手を取って見せる。 その手首にある刻印に、FBIは反応する。 「…脅しか」 「脅しだなんて…ただ事実を述べただけですよ。貴方方がきちんと誠意を見せ続けてくだされば私はきちんと協力しますよ。…まぁそこら辺は貴方方で合議をしてくださいね」 にっこりと彼は笑ってそう言うと、ダニーを強引に連れて署内へと戻っていった。 FBIはシンとダニーを見送った後に苦々しげな表情で溜め息を吐くと、撤収の意を示す。 「待て」 だが横合いからかかる声に代表らしき男が足を止める。 「何だ」 「あの男が何者か答えてもらおう」 視線の先にいるマックが険しい顔で問いかける。 「…シン・グリッソムに聞くといい。私達よりずっと知っている」 あえて明快な答えを言わずにシンを示唆すると、歩き出す。 だが、その途中で足を止めると振り向き、 「一つだけ言うなら、その男が今朝教会で発見された事件の犯人だ」 驚くべき発言をそこに残した。 |