THORNY PATH


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Uno stinco di santo.

心理分析官三年目のシンとバラ
(1997)




 ガチャリ。

 黒紅。
「……」

 パタン

「シン?」
 扉を開けたと思ったらすぐに閉めたシンの様子に首を傾げるスピードル。
「…ティム」
 向けられる眼の真剣さにたじろぎながらもスピードルは問いかける。
「な、何だ?」
「悪いけど開けてくれないかな?」
 妙に寒々しい笑顔を浮かべながらの言葉に変に思いながらもシンが再度頼むのでドアノブに手をかけて開ける。
 ぶわりと舞う黒紅。
「…薔薇?」
 シンが使うデスクの上。
 そこを占領するかのような大きなバスケットが置かれ、そこに埋め尽くされた黒紅の薔薇。
「…やっぱり薔薇があるのか」
 幻覚だったら何よりも嬉しいのに。
「心当たりでもあるのか?」
「……こんな風にやってくる人は一人だけだよ」
 その声は至極穏やかだが、そこに浮かぶ目は、恐ろしい程に冷たい。
 どんな相手からでもこっちが心配する程に穏やかに笑う男なのだが、今やその雰囲気はひたすら冷たく、吹雪が見える。
 思わず直視できなくて視線を逸らすと、薔薇の上にカードが一枚置いてある。
 シンがそんな表情をする人間がどういうものなのかと、興味にかられて手に取る。

『To my beloved W.Rose. I love you than anyone.』

「………熱烈だけど…W.Rose?」
「ただの愛称だよ」
 横合いから伸びた手がカードを取り上げると、破り捨てる。
 その表情は笑顔だが、目は至って冷たい。
「その薔薇もカードも捨てるから、気にしないように」
「…珍しいな。お前がそんな態度を取るなんて」
 どんな相手だって穏やかに笑って、心に決めた人がいるからと断るがその好意を拒否したことはないのに。
 スピードルの指摘にシンは…絶対零度の笑みを浮かべる。
 ――怖ぇ。
 今までに無い怒りの様子にスピードルは頬を引き攣らせる。
 怖がらせてしまっていることに気づいたシンは態度を改める。
「ごめん。……でも、私が世界で二番目に嫌いな人からの贈り物だったから」
 つい感情的になってしまった。
 シンは困ったような笑みを浮かべてスピードルにそう言うと、バスケットを持ち上げる。
「これ捨てたらお茶しない?」
「あ、ああ。休憩所に行こう」
「うん、そうだね」
 その方がいい。
 シンは嬉しそうに笑うと、スピードルと共に部屋から出て行った。



(Title:SBY)