THORNY PATH


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この感情に答えを出して

シンが心理分析官であり捜査官であった四年間
(1994〜1998)




 子供の頃から他者の心を読み取り開かせることに長けていたので、それを良い方向へと活かしていきたいと言う思いから心理分析官の道を選んだシン。
 マイアミ・デイド署に入ったシンはすぐに実力を発揮。
 人当たりが良いのと中性的な容貌で男女問わず反抗があまり無いので被害者と接触したり、また偶然巻き込まれた事件で交渉人代行をしたり。
 その事件をキッカケに交渉班の訓練も受けた経験があります。

 当時CSI主任だったメーガンとも交流があります。
 シンは仲の良い夫婦に、幸せになってほしいなと思って人間関係のアドバイスをしたり。
 メーガンはシンから庇護欲を感じるのと、シンと会話すると夫も嫉妬を抱かないので。

 スピードルがCSIに入ってきたのはシンが心理分析官二年目になる年。
 メーガンの弟子なので、シンとも交流があります。


***


「メーガンさん」
 事件の証拠のことで報告し終わる。
 と、かけられる声。
 メーガンはそっと視線を上げ…嬉しそうに笑う。
 そんな表情は彼女の夫の前で浮かべるものに近いが、かかってきた声は何回か聞いたことがある夫のものではない。
 そう判断したスピードルは、なら誰かと思いながら振り向き…絶句する。
 艶やかな黒髪に黒目。
 東洋系の顔に細い体躯。
 …そこまではいい。
 だが中性的なその容貌は、どこか作り物めいた美しさがあった。
「随分と久しぶりに感じるわね」
「そうですね。…互いに忙しかったから」
 メーガンの言葉にその人物は笑うと、凝視するスピードルの視線を感じたのかそちらに顔を向けて、

 ふわり。

 花が咲いたような笑みが浮かぶ。
「今年入った方ですか?」
「ええ。ティム・スピードルよ。スピードル、彼は心理分析官のシン・グリッソムよ」
「シンです。始めまして、スピードルさん」
「…こちらこそ始めまして」
 握手を求められ答える。
「…男、なのか?」
 初対面にしては不躾すぎる質問。
 だがシンは気分を害した様子も無く、
「男ですが…女性に見えます?」
「どっちか解らないから聞いた」
 雰囲気や仕草がどっちでも取れるようでありどっちでも無い曖昧さを感じて判断が付かなかったのでそう言うと、シンは困ったように笑った。


***


 そしてそれから、年齢が近いのでスピードルと交流を交わし、心理分析官として過ごしていましたが、三年目になると、自分は組織に所属するのは無理じゃないのかと思い始めています。
 法を破ることも守ることも両方知っている自分が異質であると感じ精神が蝕まれていくようで辞職も感じはじめます。
 その心情を察したかどうかは解らないがスピードルやメーガンに心配され、心機一転すればまだ大丈夫じゃないかと科学捜査官を志願。
 そしてもう一年は捜査官として働きます。
 憧れてもいたので嫌いではない職業でしたしやりがいも感じていましたが、やはり自分は組織で働くのは無理だと判断。
 シンは優秀だったこともあり引き止められたりしましたが、説得して辞職。
 スピードルも気を許していた相手だったのでショックを受けます。


***


「辞めるって聞いた」
 着替えているとかけられる声。
 振り向くと、常に変わらない無愛想な顔。
 だが、その黒い目に心配そうな悲しそうな色が見える。
「…今年いっぱいでね」
「……何かあったのか」
 スピードルの心遣いが嬉しくてシンは笑う。
「ありがとう。でも人間関係とか環境とかじゃないんだ」
 シンはロッカーを閉じる。
「メーガンさんもティムもいい人だし、ちょっと暑すぎるけどいい所だしね」
「じゃあ、何でだよ」
 スピードルが問いかけると、シンはゆっくり瞬きする。
「私自身がね。……異質で在り続けることに耐え切れなくなった」
 法を破る側を、犯罪を犯す側を知っている。
 だから色んなことに詳しくて、犯罪者の心理を見ることも捜査官としての役にも立った。
 でも、ダメだ。
「知ってるからこそ、私の考え方は他と違う。やり方もね。そしてそういう方面を知っているから法よりも人を取りがちだ。…私はそのやり方を出していくも押し込めていくも…耐え切れなくなったんだ」
 だから辞めることにしたとシンは告げる。
 その顔はどこか困ったようで悲しそうで…だが、意思を曲げない顔。
「…オレは頼りにならないのか」
 相談が無いことに傷ついているのだと漆黒の目が雄弁に語る。
 シンは腕を伸ばして、スピードルを抱き締める。
「ティムには随分助けられたよ。一緒にいて楽しくて嬉しかった。…だから、捜査官を選んで一年も頑張れたんだ」
 さり気に口が上手いシンには毎回、説得させられたり怒っても許してしまうので、今回も結局許して見送ってしまうのだろう。
「…嫌な口説き文句だな」
 簡単に読めてしまう近い未来を想像しながらも、素直に頷くのも嫌なので皮肉を一つ零した。


***


 そしてシンは放浪へ。
 ですがその後も、メーガンやスピードル相手に、手紙や電話のやりとりはありました。
 シンがNYで探偵をしていることも二人は連絡を受けて知っています。

 また、メーガンの夫が殉職したことと彼女が辞職したことも知りました。



(Title:SBY)