Main全てをちかう紅
義兄の誕生日に贈る守護の印。 (1991) 「お誕生日おめでとう、義兄さん」 ふわりと零れる笑み。 グリッソムは目を瞬かせ、確か今日が誕生日だったと思い当たる。 「…そう言えばそうだったな」 「義兄さんらしいね」 自分のことには無頓着だ。 苦笑を浮かべながら、夕飯をテーブルに並べる。 「仕事前だからワインもシャンパンも出せないからせめて食事を豪勢にしてみたんだ」 「…いつも通りで構わなかったんだがな」 何せ一緒に暮らし始めて、彼の家事能力が何よりも凄まじいと気づかされたのだ。 特に彼が作る料理は大抵のレストランよりも美味しい。 「義兄さんにはお世話になっているから…後、これ」 置かれる箱。 「これも、か?」 「うん。…気に入るかどうか解らないけど」 不安そうな表情を身ながら、リボンを解いて箱を開ける。 そこには、光る腕時計が鎮座されている。 「…シン」 「義兄さんはアクセサリーとか身につけないから時計なら困らないかなって…あ、代金は師から受け継いだ貯金だから義兄さんのお金には手を付けてないよ」 「…これ、高いんじゃないか?」 シンプルなものではあるが見るからに新品のその時計に思わず尋ねると、首を横に振る。 「師が贔屓にしていた店で頼んだから高くないよ」 「…シン、遺産は大切に使いなさい。君は遠慮しすぎだ」 グリッソムが複雑な顔をして忠告すると、シンは苦笑を浮かべる。 「…義兄さんに贈るものに義兄さんのお金を使ったらそっちの方が叱られる。…もし、使わせてしまって申し訳ないと思っているんだったら使ってくれると嬉しいな」 真っ直ぐに見つめられ告げられる言葉にグリッソムは数秒黙っていたが、やがて頷く。 「解った。プレゼントありがとう、シン」 困ったような顔が一気に明るくなり、嬉しそうな笑みが浮かぶ。 きっと仕事に付けて行ったらさらに嬉しそうな笑みを浮かべてくれるのだろう。 その笑顔には弱いと自覚しているグリッソムは、笑みを浮かべながらシンの頭を撫でた。 良かった。受け取ってくれて。 ほっと密かに息を吐く。 実はあの時計は、オーダーメイドだ。 寝ている間にきっちりと図り、好みそうなデザインにした。 だが、それだけではない。 自分が継承している剣術は大切な存在には証を立てる。 それはいつ立てられたか知らないが、それは日本では密かに知られている。 だが師は至ってマイペースにその証を海外でも数名に立てていた。 そして証を立てたものには容赦ない仕打ちを行った。 そこから、継承者の証『紅牙』を由来とした日本以外で呼ばれる名前から証を身につけたものは『クリムゾン・ファング・トリガー』と呼ばれるようになったらしい。 先代の証は二つを除いて無効にした。 そして自分が今新たに証を立てたのは義兄だ。 あの証がある限り、自分は義兄の為なら命をかける。 いつも形見と言って持ち歩いている一見、棒か杖のような黒いもの。 シンが右寄りに掴んで引くと紅い刃が少し露になる。 「(私が受け継ぎし宿業により、今ここに野紺菊の誓約を)」 チン、と静かな夜に響く。 それにシンはゆっくりと頭を垂れた。 証は黒い刀に野紺菊。 シンの場合はその証の他に「C.Fang Trigger」と明記しています。 一応意味はそのまんまで『紅牙の引き金』です。 原則、先代の証は無効。 一応人付きあいは今までどおりですが、先代と当代の価値観が違うこともあり当代が望まない限り無効。 因みにシンが残したのは二つ。 それは後に明かすことが出来ればいいなぁっと思いたい……。 (Title:SBY) |